PlayStation2DQ&FF in いただきストリートSpecial
DQ,FFと共に、新たなステージへ
エニックスとスクウェアの合併記念プロジェクトとして産み出された『いただきストリートSP』。旧両社の看板タイトルでもある『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』の世界観を用いたゲーム製作手法により、雑誌やWeb等のニュースメディアはもちろん、店頭での露出度も各段にアップ。この効果が新規ユーザー獲得に大いに貢献した。
既存の人気ゲームの世界観を用いるコンセプトは『いただきストリート』の特徴である「コンピュータと対戦しても面白い」にマッチしており、後の作品にも引き継がれている。
4作目となった前作『いたスト3』でオリジナルキャラクターのバリエーション展開に限界が見え始めた『いたスト』にとって、この合併記念プロジェクトは救いだったかも知れない。
いただきストリート3 インプレッション-微かな繋がりを残し、一新されたキャラクター達 / 詳細
DQ,FFの世界観でボードゲーム
対戦マップの舞台、キャラクター、音楽、全てが『DQ』と『FF』。「世界樹」や「タイクーン城」をバックに「馬車のマーチ」や「FF5メインテーマ」が奏でられ、天野シロ氏デザインによる『DQ』と『FF』28人(体)の対戦キャラクター達がタイトルの垣根を超えて"そのキャラクターらしいセリフ"を掛け合あい、そのセリフ量は従来シリーズを遥かに凌ぐ。
さらに、発売直後の『DQ8』や発売前の『FF12』からもキャラクターや楽曲が収録されるサービスぶり。営業的な意味合いもあるだろうが、両社の合併記念プロジェクトだからこそ実現できた内容といえる。いただきストリートSP 登場キャラクター・収録マップリスト / 詳細
音楽面で特筆すべきは『DQ』楽曲にオーケストラの演奏音源が用いられている点(発売直後だった『DQ8』を除く)。『FF』はシンセ音源だがオーケストラ調のアレンジがされており『DQ』音源とのギャップもなく、曲の仕上がり具合も引けを取っていない。また両楽曲とも、ゲーム中どの場面においても全く違和感を感じさせない選曲センスが光り、音楽面ひとつ取っても合併記念プロジェクトに恥じない豪華さと完成度の高さを誇る。いただきストリートSP 楽曲リスト / 詳細
この音楽面に関して、GAME Watch / 「発掘レビュー」 「ドラクエ」、「FF」両シリーズの世界観を巧みに融合では「この原稿は本作品のBGMを聴きながら書いている」旨の記述。
DS版の記事である マイコミジャーナル / 【レビュー】『いただきストリートDS』私情丸出しガチンコレビュー - 小技もあるよ!では回想として「当時、PS2をつけっぱなしにして『いたストSP』の音楽を流しながら別作業を」旨の記述があり、両名ともその魅力について触れている。
その一方で何故か、紙媒体のゲームメディアは音楽面に全くと言っていいほど触れていない。
グラフィックは描かれるコンセプトとの違いから前作『いたスト3』と一概に比較は出来ないものの、読図性の改善を含めて大幅にクオリティアップ。背景グラフィックに登場するキャラクター、洒落の効いた【チャンスカード】の絵柄チョイスなど、『DQ』『FF』の原作を知るプレイヤーを楽しませる演出にも抜かりがない。
また、『DQ』『FF』とは直接関係ないが、メディアにDVD-ROMを採用した事で読み込み速度と静音性が格段に向上。CD-ROMを採用した前作『いたスト3』での不満点が一気に解消された。
ゲームバランスは新たな方向へ
今作のマップは、分岐自由度の高さを前提としたマップ作り。しかし、新規ユーザでもプレイしやすい分岐設定を導入しつつも、『いたスト2』時代を彷彿させる高難易度のハマリブロック要素(【離れブロック】)も組み込まれており、新旧『いたスト』のテイストの融合が見られる。いたストSP 前作からの変更点 No.16 / 詳細
対戦キャラクターの行動パターンがこの『いたストSP』から新たな方向性で一新され、「低ランクの対戦キャラクターは、1回あたりの株購入枚数もお店への増資額も少ない」という強さ演出がされている。これにより「従来シリーズとは違い、低ランクキャラは運が良くてもさほど強さを発揮しない」ゲームバランスとなった。従来作までにみられた「あまり意味を成していないランク付け」は改善に向かったが、「プレイヤーが上達するほど低ランクキャラの存在意義が薄れる」などの側面がいくつか生まれてしまった。いたストSP 前作からの変更点 No.21 / 詳細
『いたスト2』時代の"しんじ"や"あやか"を知るプレイヤーからは賛否の出る変更かも知れないが、現状では、対戦キャラの強さ演出を生み出すためにどのような方法を用いてもネガティブな面や疑心の目で見られる事に変わりはない。マニア層にしか知られていないゲームからの脱却を目指した『いたストSP』。あらゆる試行をした上での方向性決定と思われる。
それでも、キャラクターの「攻撃的」「堅実型」「相手を利用して儲ける」「自分で儲ける」等の嗜好付けには、概ね原作のキャラクター設定が活かされており、このあたりでも原作ファンを楽しませる事を忘れていない。
現実問題として
「生まれた経緯」は合併記念だが、「発売のタイミング」に関しては、2004年度内発売予定だった『FF12』が次期に持ち越されたためその穴埋めソフト群の一翼を担わされた節も見え隠れする。
『いたストSP』の発表が2004年09月で、発売がわずか3ヵ月後の2004年12月22日。ボードゲームという特性や他のタイトルとの兼ね合いで年末リリースに決定されたのかもしれないが、今作のもうひとつのゲームモードである【スフィアバトル】モードの完成度を見るにつけ、もう少し作りこみが出来ていれば【スフィアバトル】モードが大化けしていた可能性が否定できない。
発売日自体は12月22日というボードゲームには最高のタイミングではあったが、これが仇となったもうひとつの問題が起きた。発売直後に年末年始の長期休暇に突入したため、店舗からのリピート(再入荷)に応えられず、年末から年明けの1月第2週ぐらいまでの長期間、ネット通販を含めて売り切れ店が続出した。
稀に見る大作ソフトの発売が重なった2004年末。メーカー側は発売日の調整、店舗側は入荷ソフト数の決定で難しい面もあったと思うが、この機会損失は直接の売上のみならず、更なる新規ユーザー獲得と露出による知名度アップを逃したかもしれない。有名大作ソフトが在庫豊富で残るなか、"DQ&FFいたスト 売り切れ"の張り紙が目立った年末年始だった。
両社の合併で実現したこの作品。企画だけなら誰でも思いつく内容だが、それをカタチにして実現するのは生易しい事ではない。下手なモノを世に出した時、傷がつくのは『いたスト』ではなく、『DQ』と『FF』そして『スクウェア・エニックス』のブランドであり、今後の商品企画にも大きな影響を与えかねない。
経済波及効果を含め数百億の金を動かす"一流ブランド"を用いた今作『いただきストリートSP』。しかし、背負わされた重々しい看板に押し潰されることも、看板だけが一人歩きすることもなく、しっかりと『いただきストリート』として成り立っている。
いたストを「勝てない」で投げ出すのがもったいない事を身をもって知っているのなら、「キャラクターとブランドに頼った」の色眼鏡で今作を見る事もまたもったいない。
※個々の詳細はいただきストリートスペシャル 前作からの変更点 / 詳細へ
『いたストSP』スクリーンショット等を確認できるサイト
- SQUARE ENIX / ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special 公式サイト
- GAME Watch / 「発掘レビュー」 / 「ドラクエ」、「FF」両シリーズの世界観を巧みに融合(2005/04/22)
注意記事:ASCII.jp - アキバ(裏) - / あなたは幼なじみ派?それともお嬢様派?
ASCII.jp - アキバ(裏) - / あなたは幼なじみ派?それともお嬢様派?(2008/04/16)
「フローラが登場する」と書かれている『ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリートSpecial』(いたストSP)は、PS2用ソフトです。PSP用に発売されている『いただきストリート』には登場しません。