いただきストリートの概要,シリーズ構成

Video GAMEいただきストリート

どのようなゲームなのか

いただきストリート略して『いたスト』は、『モノポリー』や『桃太郎電鉄』シリーズのようなすごろくタイプのボードゲーム。

各プレイヤーが順番にサイコロを振り、出た目の数だけマスを進みながらマップ上のお店を買い、自分のお店に止まった対戦相手から【買い物料】をいただく。イベントにも邪魔され助けられつつ、それらのお金を元にお店に【増資】して【買い物料】を上げ、それに連動した【株】の値上がりや、お店の【取り引き】などでチャンスを広げて上手く【資産】を増やし【目標金額】を目指す。

試合の流れと勝負所を読む能力や、対戦相手の心理を読んだ駆け引きは日常生活のあらゆるシーンで養った経験こそがものをいい、「株」や「取り引き」の専門知識は必要としない。また、そういった知識を必要とするゲームに方向転換する事も無く、あくまでも「ゲーム」であり続けている。それが、『いただきストリート』。ゲームデザインは『ドラゴンクエスト』でおなじみの堀井雄二氏だけあって複雑な操作や難解なゲームシステムは組み込まず、気軽に遊べつつ奥深さがあるゲームに仕上げられている。

爆発的ヒットゲームではないが根強い人気を誇り、発売プラットフォームの特性を活かした演出やゲームモードを登場させつつも、"ゲームの基礎部分を変えることなく"10作品以上をリリース。2011年には誕生20周年を迎え『いたストWii』が発売に。30周年となる2021年は新作リリースがなかった。

一人で遊んでも面白いボードゲーム

いただきストリートの最も大きな特徴として、対コンピュータ戦をきちんと作り込んでいる点があげられる。人と対戦したり協力したりするのはそれだけで面白い訳で、そこに頼り切った作りをしていない。実際、作者の堀井雄二氏は「いたストは一人プレイが好き」との趣旨を以前からインタビューなどでコメントしており、そこは折紙付。
参考リンク:Web上で読める最新のものとしてはTouch-DS.jp / Creator's Voice(4ページ目)があったが、Touch-DS.jp は閉鎖の模様)

この肝作りを疎かにしたコンピュータゲームが多いため、「対コンピュータ戦も面白い」事が『いたスト』の特徴のひとつになっている。"既存の知名度と、練り上げられた世界観とゲームキャラクター"を用いた『いただきストリートSP』、『いただきストリートポータブル』、『いただきストリートDS』のコンセプトは、この点を更に活かしたゲーム作りといえる。

あきらめなかったその先で待つもの

いただきストリートを含め、根強い人気を誇るコンテンツを和食に例えるなら「スルメ」や「餅」に相当する。一口噛んだだけで「硬い」「味がしない」と吐き出していては、一生その美味しさを知る事は出来ない。

なによりも、『いたスト』は「運が悪ければ、悪いなりの戦い方がある」ゲーム。運の悪さのなか諦めずにプレイを続け見事な逆転劇を決めた時には、腐っていた自分が恥ずかしくなる快感と反省、そして『いたスト』へのハマリ道が待っている。試合後に戻るメニュー画面のメッセージ「いただきストリートへようこそ!」が、そういったプレイヤーへのニクイ演出でもあった事に気付かされる瞬間でもある。

歴代いたストのスクリーンショット

上記の『いたストWii』公式サイト内に初代とモバイル系を除く過去シリーズの画面写真が掲載されている。ただし、『いたスト2』として掲載されている画面写真は右隣の『いたストゴージャスキング』のものが誤って掲載されている。

いたストを知る上で参考になる、ニュースサイトのレビュー記事等

マイナビニュース(旧マイコミジャーナル)のDS版レビューと4Gamer.netの企画記事は各シリーズの紹介のみならず、いたスト全般のテクニックを紹介しながらのプレイ記が非常にわかりやすく面白い。どのシリーズにおいてもプレイの参考になるので、これから『いたスト』をはじめる人にはお勧めの記事。

いただきストリートシリーズの特徴

比較的わかりやすいシリーズ構成

いただきストリートは2022年4月現在までに、家庭用ゲーム機で9シリーズ、携帯アプリ(リニューアルも1作としてカウント)で5シリーズ合計14シリーズが発売されている。2017年10月19日発売の最新作『いただきストリート ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー 30th ANNIVERSARY』(いたスト DQ&FF30th)はシリーズ初の複数機種(PS4 / PS Vita クロスプレイ、クロスセーブ対応)同時発売の作品となった。それでも番外編タイトルの発売は未だなく、後述するように比較的分かりやすいラインナップを維持している。

『いたスト』においてはナンバリングタイトルかどうかはゲーム内容の判断材料にはならず、タイトルによっては過去作に登場したキャラクターが再び登場しているものもあるが、過去作を知るプレイヤーが有利になるような要素はなく、過去作のセーブデータ引継ぎやそれによるオマケ要素などもない。

いただきストリート シリーズの歴史 / 詳細

最近のゲームソフトには「番外的」タイトルやアレンジが施された「移植作」、名前だけ継承した「もはや別物」のゲームが見受けられる。そのため熱心にゲーム情報を追い続けないと「そのタイトルのシリーズの繋がり・流れ」「過去作とのゲーム内容・方向性の違い」などの把握が非常に難しい現状が生まれている。

しかし、『いただきストリート』シリーズはどのタイトルであっても"ゲームの基本部分"は変わらない。つまり、グラフィック等の好みを除けば「どれを買っても『いただきストリート』のシステムとルールを体験できる」ということ。若干みられるシステム面の変更は、"遊びやすさ""わかりやすさ"を考慮したものであり、ゲームの基本部分を変える変更は行われていない。

機種と年月を超えての発売意義

「基本が変わらないのに新作を出す意義があるのか」という見方もできるが、「そのとき主流のハードへの投入を継続する事で、プレイしやすい環境(古いハードとソフトを確保しなくてよい)が維持される」「機種の特性を活かした新作つくり」といったプラスの側面もいくつか存在する。

しかし、これらの特徴には以下のようなマイナス面も持ち合わせている。

  • 「大きく変わらない」事がネガティブに捉えられる
  • 「はじめてのプレイヤーでも安心のシステム改変」といった売り文句が使えず、知名度アップがそのままユーザー増に繋がるとはいえない
  • 「難しそう」というイメージの払拭が出来ない

廉価版発売に消極的な弊害と、その後

『いただきストリート』の廉価版発売はエニックス時代の1997年に『いただきストリート2』で行われたが、それ以降は2008年の『アルティメット ヒッツシリーズ / いただきストリートポータブル』と『アルティメット ヒッツシリーズ / いただきストリートSpecial』まで行われていなかった。

1997年の『いただきストリート2』廉価版発売は既に「プレステ・サターン」時代に入っていた事もあってか、「何時の間にか廉価版に置き換えられていた」程度のひっそりとしたものだった。しかし、2008年の『いたストポータブル』と『いたストSP』は、スクウェア・エニックスの"アルティメット ヒッツシリーズ"としてリリース。久しぶりの廉価版発売が実現したのは同社のアルティメット ヒッツブランドの存在はもちろんだが、2004年の『いたストSP』による知名度アップも大きな役割を果たしているといえる。

その2004年に発売された『いたスト』の知名度アップの立役者『いたストSP』の発表以降は、「新品入手が困難な」既存シリーズが中古ソフト市場で値上がり傾向をみせていた。特に新作発売直前にその傾向が強く、『いたストSP』発売前には大手チェーン店で『いたスト3』の買取値が3,000~4,000円とアナウンスされるほどだった(定価は税別6,800円)。

ボードゲームという性質上、発売から月日が経っても売れるゲームであるものの、現実問題として『いたスト』以上の知名度と人気を誇る別のボードゲームが存在する以上、1年も経過すれば『いたスト』のパッケージを店頭で見かける機会は少なくなる。

「真新しいパッケージを手にしたい消費者の気持ち、女性やライトユーザーを中心とした中古品に抵抗をもつ消費者の存在、メーカー及び開発者の利益と評価、再発売のニュースによる宣伝効果と店頭での露出機会増加、中古品なのに新品と変わらない値段という現実などを考慮すると、メーカーには廉価版の発売が望まれる。」

と以前記していた問題もクリアされてきている。